2006-07

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〈本〉の彼方 1

桜井秀勲著
『イロハからわかる編集者入門』・評(編書房)
―「図書新聞」掲載

 タイトルはいかにも入門者向けだが、実は「編集者になるなら編集長を目指せ」という熱いメッセージで貫かれている。出版界は冬の時代といわれる。だからこそ、「新しいものを世に出す執念」「いま自分の心の中に燃えたぎっている“時代”というものをいかに形にして多くの人に読んでもらうか」という思いがなければ、出版界は滅びていくだけだと著者はいう。また、それだけやりがいのある仕事なのだとも。
 編集者になったら〈私が編集長だったらいまの雑誌をどうする?〉と言う観点から空想を逞しくしていくことだと語る著者、櫻井秀勲は、光文社の『女性自身』の3代目編集長を経て、祥伝社を創立、『微笑』を創刊した知る人ぞ知る名編集長である。著者が偉大な出版界の先輩たちと「拈華迦葉微笑」を地で行くような出会いを重ねながら、女性誌づくりの名人といわれるようになったのは、まさにこの著者の志の高さゆえであろう。
 これから編集者を志す人は、「編集長になってやる」――そんな志を高く掲げて、この本を読もう。小手先のノウハウではない、編集者の王道について知ることができる。
 実際に編集の現場で働いている人もぜひ読むべきだ。この本を読むことで初心に帰ることができる。いま、編集者に求められているものは大きく様変わりしている。よき先輩にめぐり合って、すばらしい手ほどきを受けながら成長していく僥倖に恵まれれば幸いだが、実際は、忙しさのあまり、ただルーティンワークとして仕事をこなしているだけということも多いのではないだろうか。「編集者ってなんだろう」と自分の日々の仕事を見直すことは大事である。 
 本書の中でも圧巻なのが、著者の文章術を凝縮した「生きた文章――私の文章十則」である。編集者に求められるものは「文章力」「企画力」「取材力」であると著者はいう。そのうちの「文章力」について述べたものだが、どの項目も、送り手として常に読者を意識してきた編集者ならではの、言葉の生理に熟知した眼差しを感じさせる。「1、できるだけ表現をやさしくする。2、文章の長さに気をつける。3、文章は動きからはじめる。……」とつづく最後は「10、教訓調は絶対書かない」。いずれも肝に銘じておきたいことばかりだ。
 全編にどうしても書きとめておきたいと思わずにはいられない名言がちりばめられている。
 「愚かな編集者ほど雑誌の程度を高くしたがる」「雨の日風の日訪問びより」「真似することをおそれるな」「編集者は編数者」……
 実際に仕事をしてみれば、一見平易に見えるこうした言葉の数々が、いかに重要なことを語っているかにすぐ気がつくだろう。読み進むにつれて桜井編集長の下で手ほどきを受けているような気持ちになってくる。そして、その背後に歴代の名編集者たちの存在がまざまざと感じられてくる。連綿と伝えられていくであろう「編集者魂」とは「新しいものを世に出す執念」なのだということがわかってくる。
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梶葉子

Author:梶葉子
読書のよろこびはなにものにもかえがたいものです。
私を実に実に遠くまで連れ去って
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そこに吹く風や漂う香りを感じさせてくれる
書物に感謝しつつ
ささやかな感想をしたためていきま

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