2006-09

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環境という視線 3

ダミアン・ミレー エリック・トゥーサン著
大倉純子訳『世界の貧困をなくすための50の質問
―途上国債務と私たち』・評(つげ書房新社)
―「図書新聞」掲載

 アフリカをはじめとする途上国で深刻化している環境破壊や飢饉、貧困についてはしばしば報道されるが、それが途上国の抱える累積債務を原因としていることはほとんど報道されない。当然、なぜ途上国は債務漬けになっているのか。返しても返しても返済しきれないという状態がなぜ起っているのかについても私たちはほとんど知らないに等しいだろう。日本が途上国に対しておこなっている円借款は、90年代の十年間にわたって世界一だったというのに(2001年以降はアメリカに次ぐ第二位だそうだ)。もちろん、日本の円借款は返済義務を伴う有償援助が大部分である。
 では途上国はなぜ債務漬けになってしまったのか、また、債務危機はなぜ起ったのか。
 本書を読むとその経緯は一目瞭然である。五十の質問からなるQ&A形式がとられており、質問を順にたどっていくにつれて、先進国の世界支配の構図が手に取るようにあきらからになっていく。
 それは第二次世界大戦後、一瞬勝ち取られたかに見えた第三世界の国々の独立と自立の道が、地球上の一握りの先進国の私利私欲のために潰えていった歴史でもある。
 六十年代から七十年代にかけて行われた、だぶついたユーロダラーやオイルダラーの北の銀行からの南の国々への低金利による貸し付け、北の国々によるただ自国の都合だけの援助(それは援助どころか、北の国々の不況を打開するために南に購買力をつけさせる目的でなされたものに過ぎなかった)、そして、世銀による劇的な貸し付けの増加などでまず債務漬け状態がつくられ、その後八十年代にいたって米国の都合による大幅な金利上昇によって返済額が途方もなく膨れ上がり、途上国の輸出産品の市場価格は下落していき……といった具合に、北の国々の政治的、経済的なシナリオに翻弄される南の国々の姿が浮き彫りにされている。
 債務の利息は雪達磨式に増えていき、それを軽減してもらうためには、IMFや世界銀行の査定を受けなくてはならずそのためのプログラムがさらに債務を膨れ上がらせているという構図は、サラ金に痛めつけられる中小企業の人々を考えればわかりやすいかもしれない。大企業の一人勝ちで、持てる人材や秀れた技術も放出せざるを得なくなり、金を借りれば利息に首が回らなくなって、どんどんジリ貧になっていくのによく似ている。
 こうした事実こそ、実は学校の世界史がまっさきに教えるべき最重要事項ではないのだろうか。
 これは姿を変えた植民地支配である。地球上のごく一握りの先進国が「途上国債務(対外債務)」という形で、途上国を、いまもなお、いやこれまで以上に巧妙かつ過酷に締めつけ、支配しているのだ。途上国の貧困の原因はそこにある。
 「責任は先進工業国の側にあるのです(特に米国政府と北の銀行)。南の側の腐敗、誇大妄想、民主主義の欠如が事態を悪化させたのは確かでしょう。しかし、これらが危機を引き起こしたのではないのです」
 その当然の帰結として、「世界のもっとも豊かな一%の一年間の収入は、この星のもっとも貧しい五七%の人々の年間収入に等しい」という事態が引き起こされ、その事態はよくなるどころかいずれの途上国においても悪化の一途を辿っている……これが今日進行しているグローバリゼーションの正体である。
 対北朝鮮や中国との関係をめぐって、憲法9条改定論議がかまびすしいが、自国の平和や安全の問題だけに汲々としている場合ではないぞと頭をガツンとやられたような気がした。
 本書はCADTM(世界債務廃絶委員会)の代表とフランスの事務局長の二人の共著である。CADTMという団体が存在することを私は本書で初めて知った。CADTMは、八十年代にフランスで起った第三世界の債務の無条件即時帳消しを要求する運動を受けてつくられた国際ネットワーク(ベルギーのブリュッセルが本拠地)。「世界のさまざまな形態の抑圧に対抗し、それに変わるもう一つのラディカルなあり方を推し進めて」おり、運動は世界中に広がりつつあるという。
 その中心課題は「G8、多国籍企業、世界銀行・IMF・WTOトリオによる世界支配を終らせ」ること、「途上国の公的対外債務の無条件帳消しと第三世界に押しつけられるSAPs(注:構造調整プログラム)の廃絶」である。
 日本語版への序文にはこんなふうにかかれている。「今こそ私たちは大きく声をあげ、『もう一つの世界の可能性』をさらに力強く求めていかなければなりません。それは『北』であっても『南』であっても、裕福な債権者への債務返済ではなく、人間の根本的に必要なものの充足こそが最優先される世界です。世界規模で、すべての途上国の公的対外債務返済の無条件全帳消しへの闘いが加速しています」
 その解決方法は「債務の帳消し」にしかないことは、「すでに借りた金の何倍も返済されている」という事実をとっても明らかであることが本書を読むとよくわかる。グローバリゼーションに支配された「市場の論理」から脱却したアクションについて考え行動を起こすことこそ、平和や反戦につながる行為であると本書は確信させてくれる。
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梶葉子

Author:梶葉子
読書のよろこびはなにものにもかえがたいものです。
私を実に実に遠くまで連れ去って
みえない世界を垣間見させ
そこに吹く風や漂う香りを感じさせてくれる
書物に感謝しつつ
ささやかな感想をしたためていきま

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