2017-07

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〈信〉ということ 2

ヘンリ・M・J・ナウウェン著 宮沢邦子訳
『いのちのしるし―心の奥の愛の声』・評(女子パウロ会)
―「図書新聞」掲載

 著者のナウウェン神父には50冊以上の著作があり、邦訳も多いということだが、今年、『最後の日記』(本紙6月8日号に書評掲載)につづいて邦訳されたのがこの二著である。
 これらに接するまでは、私にとってキリスト教といえば、高橋たか子の著作を通じて垣間見た世界がすべてであったといえる。ジイドやモーリヤック、ジュリアン・グリーン、遠藤周作、大原富枝などのキリスト教作家の小説作品も彼女の存在がなければ、手にすることはなかっただろう。
 高橋たか子への関心は、「内部の海」への飽くなき遡及、その道筋への共感としてやってきた。一時、彼女が小説家であることをやめ、「これからの自分の著作は霊的著作である」と記したとき、「霊的」ということの真の意味を知りたいと切実に思ったものだ。 
 キリスト者でない私にとって、それは到底理解できない世界であるいっぽうで、宗教というジャンルを必要としない無辺の世界の中で魂が自ずから感じとらざるを得ないある「存在」への関心をかきたてる。
 私はなぜこの星のこの国に生れ落ちたのか。私はどこから来てどこにいくのか。その道筋は何につながっているのか。人との出会いや別れには偶然以上のどんな意味があるのか……人間の脳が見せる幻影であるに過ぎないとしても、私たちの遺伝子に刻み込まれた生命の記録が、黙示録のようにそれぞれのいのちの小部屋に置かれていることがふとざわめきのように心をよぎり、胸をつかれる瞬間があるにちがいない。生まれて死んでいくことの不思議は、数々の出会いと別れを重ねていく中で、ますます解き明かされない謎として、日常の裏側にぴったりとはりついてはがれない。
 こうした思いは、ある特定の宗教を信じるか信じないかということとはあまり関係がないはずだと思いながら読み進めた。
 86年に書かれた『いのちのしるし』は、著者が大学の教壇を去ってカナダのトロントにある「ラルシュ(箱船の意)」という知的障害をもつ人々の共同体に滞在しているときに書かれた。副題の「キリスト者の視点から見た親しさ、豊かさ、喜悦」が示すとおり、そこでの日々においてより豊かに深められた霊的生活からのメッセージである。
 キリスト者の言葉で語れば、人間関係の亀裂、貧困や暴力、権力支配、戦争といったもろもろに翻弄される私たちの現実が「恐れの家」の生活である。それに対峙されるのが「愛の家」。イエスにつながることで得られる親しさ、豊かさ、喜悦に満ちた生活である。「愛の家の親しさは、つねに弱い者との連帯に導く。無条件の愛でわたしたちを愛してくださる一人のかたの心に近しくなればなるだけ、あがなわれた人類の連帯のなかでお互い同士が親しくなっていくのである。」(56頁)「神の方法は弱さの方法である。福音の大きな知らせは、神が傷つきやすいものになったということである。そして、わたしたちの間で、実を結ぶものとなったことである」(76頁)……こうした記述に明らかなように、「弱者としての人間」を自覚し直視することで神に向かい合うことが一貫して説かれる。宗教をもっとも近く、そしてもっとも遠く感じるのがこの地点であろう。いずれにしてもキリスト教=宗教の存在することの本質がここでは語られている。
 いっぽう、『心の奥の愛の声』は87年12月?88年6月に記されたもので「精神的危機の中で一種の自己治療のために書きとめた内面の日記のようなものらしい」(訳者あとがき)。
 この時期、著者は「自分の信仰を虚しく感じ、(略)神に棄てられたと感じていた」「ようやく見つけた家の床が抜けたような気持ちだった」。これらのすべては「ある友情がとつぜん断ち切られたのが引き金となって起こったのだった」という。ラルシュに滞在して親しさ、豊かさ、喜悦について、喜びをもって記した著者が、一転してみせる懊悩の姿は、私にはむしろ好ましいものとして映った。
 これらの書物は癒しのための処方箋というよりも、キリスト者として主体的に生きている人の内面世界をたどることで、宗教とは無縁に生きている私に「宗教とは何か」「信仰とは何か」を突きつけているように思われた。
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Author:梶葉子
読書のよろこびはなにものにもかえがたいものです。
私を実に実に遠くまで連れ去って
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書物に感謝しつつ
ささやかな感想をしたためていきま

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