2017-09

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〈本〉の彼方 2

近江哲史著
『図書館に行ってくるよ―シニア世代のライフワーク探し』・評(日外アソシエ―ツ)
―「図書新聞」掲載

 本書を読み進めるうちに、子ども時代の図書館の記憶が甦ってきた。小学5年生のときに図書委員になった。本を整理したり、貸し出しカードにはんこを押したりするのが楽しく、誇らしかった。ボロボロの本を針と糸で修理する方法を教えてもらって、ちょっと専門職の気分だった。大好きな本がぎっしり詰まった薄暗くてちょっとかび臭い書庫、明るい日差しの満ち溢れた閲覧室……図書室は学校の中でも一番好きな場所だった。
 中学、高校、大学といま思い返してみても、学校の図書室と町の図書館だけははっきりと思い出すことができる。司書になりたいと夢みたこともあったっけ。仕事を持つようになってからは休日しか図書館に行けなくなったが、住いが変わるたびにまずは地元の図書館の場所を確認して、やっとその町に落ち着けたような気がしたものだ。 
 コンピュータでさまざまな情報の検索できるようになって、仕事がらみの資料探しのためにわざわざ図書館まで足を運ばなくても済むことも多くなったが、休日の図書館通いの楽しみを手放すわけにはいかない。私の場合は、新聞や雑誌で目に留まった本を探しに出かけることが多い。しかし、当てもなく本棚の間を歩き回るのもまた楽しい。誰の目にも留まらないような片隅で、何とも魅力的な本に出会って、それがきっかけで、著作を全部読んだ作家や家に買い揃えた作家も何人もいる。本書のタイトル、『図書館に行ってくるよ』は、まさに私が日常的に使っている合言葉なのである。
 本書は、副題に「シニア世代のライフワーク探し」とあるとおり、時間のできた退職後のシニア世代に向けて書かれたものであるが、図書館をめぐるさまざまな提案は、現役世代にもぜひ読んでほしい魅力的な視点に満ちている。
 図書館はブラッと出かけてのんびり新聞を読んだり、気に入った本を見つけてゆったり読書したりするためのありがたい場所だが、ただ受動的に利用するだけではもったいない。一歩踏み込んで「テーマ探しとライフワーク実現のために」図書館を積極的に活用することを著者は提案する。他人のあとをたどる「学習」から、自分の生涯のテーマの「研究」へと歩を進めるために図書館を積極的に活用すべきだと。
 たとえば、「自分大学」の構想を立てる。「読書」を中心に据えながら目標を決めて、一年目、二年目と進む。読むだけでなくレポートを書く。最後に卒業論文をまとめる。そのために図書館はなくてはならない、頼もしい存在である。
 だからこそ、図書館の選書、レファレンス業務、イベント企画などのあり方や活動のしかたへの注文も厳しい。利用者も受け手にとどまらずに、ボランティアで図書館の仕事に関わるべきだと呼びかける。
 著者は「図書館のオーナーは住民であるはずだ」と述べる。そして、森まゆみ氏の「図書館の運営は本好きによる地域NPOで行うべきだ」という意見に賛同する。私は知らなかったが、欧米でも日本でも「図書館友の会」というボランティア組織がつくられているそうだ。日本ではまだ動きがにぶいが、「アメリカではほとんどどこでも図書館友の会が地域の図書館を支持して、積極的な活動を行っている」そうだ。「図書館を自分たちのものとしてしっかり認識して、自分たちの力でこれを良くしていこうというパワーがみなぎっている」。図書館そのものの活動も活発で、老人養護施設や在宅障害者へのサービス、郵送による貸し出しサービスなども行っているという。
 そんな基盤を土台に著者は「ミニ図書館を街角にたくさんつくろう」とも提案している。「商店街の一軒、団地の中の空いた部屋一つ、公園の片隅にも一つ、さしあたりポストと同じ数程度というのがムリなら、交番の数ほどでもと言っておこうか」「日常の運営管理をする人を、本好きなボランティアにお願いする。(略)その人の個性に委ねて図書館に個別的な性格をもたせる」「ミニ図書館の管理を行う人は、通称としてでも『ミニ図書館長さん』の名を与えたい。よい意味で私立図書館の雰囲気をもった自由な小さい図書館があちこちにできあがれば、どんなに町は楽しくなるだろう」
「図書館のオーナーは住民である」という著者の言葉を借りれば、美術館も博物館も公園も、そして町もまた「オーナーは自分」なのだ。地域で暮らすこと、住民であることへの意識変革をも促す好著である。
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Author:梶葉子
読書のよろこびはなにものにもかえがたいものです。
私を実に実に遠くまで連れ去って
みえない世界を垣間見させ
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書物に感謝しつつ
ささやかな感想をしたためていきま

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