2017-09

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〈こども〉のなかへ 3

梓加依編著
『子どもたちの笑顔に出会いたい―読み聞かせ、ブックトークの魅力と実践』・評(素人社)
―「図書新聞」掲載

 本書には教師の「読み聞かせ」や「ブックトーク」への取り組みや親子の体験談が豊富に収録されている。
 「今、子どもたちへの読み聞かせや読書を進める方向に日本全体が動いています。『子どもの読書を推進する法』の施行や『子ども読書の日』の制定など、国を挙げて子どもの読書に力を入れだしました」「近年、子どもたちは語彙数が乏しくなり、文章を理解する力は低下し、学力も低下している傾向が明らかにされ、その一つの原因が『読書』をしないことであることが指摘されています。(中略)そうしたことから、読書を推進するということが行われるようになったわけです」(本書前書きより)
 もちろん、著者は読み聞かせや読書は法律までつくって「させられるものではない」ことを重々承知である。しかし、閉じこもりや不登校、いじめや自殺、殺人と深刻化していく事態を受け止めかねて、親も教師もすっかり自信を失ってしまっている時代だからこそ、あえて「読み聞かせ」と「ブックトーク」という?技法?で、事態を切り開いていこうとしているのにちがいない。
 私が「読み聞かせ」という言葉をしきりに耳にするようになったのは、3?4年前だっただろうか。「赤ちゃんのときから読み聞かせをするのが大事なんだって」というような会話を小耳にはさんだとき、ちょっと奇異な気がした。
 私自身、小さい頃に両親にさまざまな寝物語をしてもらった。擬音効果入りの風の又三郎や善太と三平の物語、桃太郎やカチカチ山の昔話に、現実以上のリアリティを感じて聞き入っていたひとときをいまでもありありと思い出す。あれほどの濃密な時間はなかったと思うと、子どもに自分の好きな物語を選んで読んで聞かせるということの大切さは、よくわかる。しかし、それはごく自然な子育ての一部分で、あえて「読み聞かせ」といったような用語を与える必要もないものだと思っていたからだ。
 本書に実践報告を寄せている教師たちも実はそれぞれが「読み聞かせ(昔はこういう呼び名はなかったが)」の素晴らしい原体験をもっていることがよくわかる。ただ、それらは深く心の奥底に仕舞い込まれて、日の目を見る機会が失われていた。
 本当はそのことこそが問題にされるべきなのではないだろうか。
 本離れ、読書離れというが、ケイタイによるメール、パソコンによるチャットなど読み書きの機会は、昔より格段に増えているのだ。生まれたときからテレビがあるという現実。言葉の溢れかえった状況の中で、子どもを「本」のある場所に取り戻す試みとは、実は、人間関係の結び直し、という意味でこそ有効なのだと思われる。
 生身の人間離れがすすみ、一対一の生身の人間関係をうまく結べなくなってさ迷う子どもたちを、果たして、本を媒介にして「肉声」の持つパワーに、生きた人間同士の交わりの場所に連れ戻すことはできるだろうか。
 「(読み聞かせやブックトークを通じて・筆者注)まず『子どもたちを知る』ことがとても大事なことです」「読み聞かせやブックトークをする時は(中略)先生の『人間』を出して子どもと関わってみてください」
 著者のこんな呼びかけは、痛々しい教育現場の実態を逆に教えてくれる。
 あらかじめ傷ついて生まれてきたといってもいいような現代の子どもたちに、「肉声」がしっかりと届けられるためには、まず大人の側の、一冊の本を手にとってその本に深く感動する心、その回復が求められている。
 両親の寝物語で育った私たちは、小学校や中学校で、書物に熱い愛情を寄せるセンセイに出会った。その数は決して多くなかったが、彼らの存在がその後、私たちを「文学の森」への誘うきっかけをつくってくれた。
 そんなセンセイが学校に必ず存在しているはずだと信じたい。

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梶葉子

Author:梶葉子
読書のよろこびはなにものにもかえがたいものです。
私を実に実に遠くまで連れ去って
みえない世界を垣間見させ
そこに吹く風や漂う香りを感じさせてくれる
書物に感謝しつつ
ささやかな感想をしたためていきま

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