2017-09

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旅・紀行から 1

文化庁編
『わたしの旅一〇〇選』・評(ぎょうせい)
―「図書新聞」掲載

 本書は二〇〇五年八月に文化庁が公募した「わたしの旅?日本の歴史と文化をたずねて」に応募された786件の旅プランをまとめた一冊である。一〇〇選に選ばれた大賞1プラン、特別賞9プランの詳細ほか、全応募作品のコース一覧、立松和平氏や平岩弓枝氏など審査員9名のエッセイも併載されていて、創意あふれる旅の指南書に仕上がっている。
 河合隼雄(前文化庁長官)氏の「刊行によせて」を読むと、「『日本人はあんがい自分の国のことを知らない』『日本の歴史や文化はなかなか面白いのに、それをまったく知らず、海外旅行に熱中したりする』。こんなことを、小泉総理と話し合っているうちに、日本人が日本の歴史と文化をたずねる旅をもっとすればよいのに、ということになり」、公募に発展したとある。「観光ということがどうしても表面的になるのが残念で、私は『文化観光のすすめ』とか『観光の深化』などという雑文を書いたりして、単なる観光をこえた旅を推奨してきた」という河合氏の意見にわが意を得たりという人も多いのではないだろうか。
 昨年夏、久々に母と妹と三人で瀬戸内に出かけた。いつもは人任せの旅プランを、宿の手配から電車の乗り継ぎまで一人でプランニングした。もし行ってみて電車が来なかったらどうしよう。旅館が予想とちがっていたら……と不安は尽きなかったが、電車と船を乗り継いで最初の目的地、宮島に着いたときは「ちゃんと乗り継げた!」と感動した。自分で立てたプランが現実になったときのインパクトは、お膳立ての整ったパックツアーとはひと味もふた味もちがうものである。二泊三日とはいえ、プランニングにはかなりのエネルギーを要した。それだけに、現地で想定外のことが起ったときもかえって新鮮で、そんな予想外の出来事のほうが印象に残っている。
 私の場合は宮島と尾道に行ってみたい。あの旅館に母と妹を連れて行きたい……そんな単純な思いつきだけだったが、それをもう一歩進めて、もっと「テーマ」をはっきりさせた旅を計画できたら、さらに旅の楽しみは深まるだろう。地方自治体の財政破綻がさまざまに取りざたされているが、地方財源として、箱物や従来のパターンに頼らない、「観光の深化」がもっと見直されてしかるべきではないだろうか。
 さて、おそらく旅の達人や滅法旅好きな人たちが応募したのであろうから、きっとユニークなプランが満載だろうとワクワクしながら本書をひもといた。
 大賞は「“Japan”を訪ねる旅」と銘打たれた菅野淳一氏のプランである。英語では「漆器」を“Japan”という。「日本の歴史と文化をたずねる」というテーマに、真っ向から「Japan=漆器」をぶつけてきたところなど、実に斬新である。プランは十泊十一日、訪問先も沖縄から石川県までの6都府県と壮大な旅だが、菅野氏は「イギリスに訪問した折、お土産に漆器のスプーンを持参したところ大変喜ばれ、『漆器こそがまさに典型的な日本文化である』と言われたことがある」そうで、それがこのプランのきっかけになったと記されている。旅の対象者には漆器関連事業者をあげておられるが、“Japan”に触れる旅は一般の旅好きにとっても十分に魅力的である。
 特別賞には「旧石器時代を体験する旅―オホーツクの古代遺跡を訪ねて」(北海道)「ひな街道を行く」(山形県・新潟県)「二〇世紀初頭、外国人建築家が見た日本をめぐる旅」(群馬県・東京都ほか)など、ユニークで面白そうなプランが目白押しだ。
 わが郷里、秋田はどうかと頁を繰っていったら、あった、あった。「見どころ満載 多彩で味な、秋田の魅力、再発見!」(江口智子)……タイトルからしてうれしいではないか。
 江口氏によれば「実際に行った秋田旅行があまりにすばらしく、大満足の旅だったので、この感動を一人でも多くの人に味わってもらいたいと思い、このプランを作成した。また、『秋田旅行で四泊五日』ということに、たいていの人がけげんな反応をするが、四泊五日では不十分なくらい、秋田の魅力がふんだんにあることを示した」とある。秋田県人を代表してお礼を言いたいくらいだ。
 どんな地方にもそんな魅力がたくさんあるはず。本書を読んでいるうちに、しきりに旅心を誘われた。「日本を知る」ことは「自分を知る」ことでもある。さまざまな出会いがさらなる関心を呼び起こしてくれるだろう。まずは行動を起こさなくては!
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Author:梶葉子
読書のよろこびはなにものにもかえがたいものです。
私を実に実に遠くまで連れ去って
みえない世界を垣間見させ
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書物に感謝しつつ
ささやかな感想をしたためていきま

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