2017-11

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〈本〉の彼方 5 

学校法人 神奈川大学広報委員会 編『17音の青春 2012 五七五で綴る高校生のメッセージ』
(NHK出版)
―「図書新聞」

 高校生と俳句といえば、全国の高校生たちが松山市で学校別に競い合う「全国高等学校俳句選手権大会」(略称・俳句甲子園)が有名で、いまや夏の風物詩となった感がある。現在活躍する若手俳人の多くが俳句甲子園出身であると聞く。俳句人口は高齢化してしまったかもしれないが、こうしたチャンネルを通じて、古い結社組織にとらわれず俳句という形式そのものの魅力に直接的にひきつけられながら俳句をつくろうとする若者たちが生まれていることはすばらしいと思う。それこそ、俳句という詩の器の生命力の証しでもあるだろう。
 俳句甲子園がスタートしたのと同じ1998年に神奈川大学創立七十周年を記念して創設されたのが「神奈川大学全国高校生俳句大賞」である。毎回受賞作品は一冊の本にまとめられ、本書はその第一四回目に当る。
俳句甲子園が学校別の対決であるのに対して、こちらはあくまでも個人参加。三句を応募して作品の成果を競い合う。
 毎年九月で締め切り、十二月に受賞作品の発表がある。今回は大震災の年でもあり応募数の減少が懸念されたが、前年度より千五百通も多い1万1000通を越えたそうだ。最優秀賞受賞作品五名、入選作品六十五名、そして一句入選作品が二十頁にわたって掲載されている。 
 選考委員は宇多喜代子、大串章、金子兜太、復本一郎、黛まどかの五氏。本書には欠席した兜太氏をのぞく四氏による選考座談会と五氏の講評、村井丈美氏と山口優夢氏による入選作品の寸評、そして一句入選作品については歌人の栗木京子氏が文章を寄せている。
 もっとも多感な時期である十代後半に歳時記や俳句形式と出会った高校生たちの衝撃や共感はどんなものだったのか。本書の作品を通じてそのときめきを追体験することができる。初々しい作品があるいっぽうで、そんなにうまくまとめないでと声を掛けたくなるような出来上がった感のある作品も見受けられる。
 最終選考に残った十一人の候補者の中から五名が大賞を受賞したが、私は金子兜太が最優秀作品に押した三人のうちの一人、青木智さん(開成高校二年、当時)の次の作品に最も惹かれた。

  麦秋の人は待人だと思ふ
  麦秋やトロンボーンを空へ向け
  麦秋のタペストリーの鳥の青

 作者は「今、改めて自分の句を見たときに、(略)私も何かを待っているのかもしれないと、ふとそう感じました」と語る。自分が産み落とした一句を通じてさらに深く自分と出会う……それこそ俳句ののぞむところだろう。
金子兜太はこんな文章を寄せている。
 「(略)俳句の伝統については、私は『詩形一本』、それ以外はすべて属性と答えてきた。この最短定型が伝統の本体で、季語は約束であり、俳諧と言われてきたそのほかの内容も、この形式が生み出した属性(独特の、貴重な属性)と言いつづけてきた。従って、五・七・五の音律と切字を十分に活用することによって、じつに豊富な内容を簡潔に表現することができると確信している。/諸君、俳句を自由に駆使されよ」。
 こうしたエールに送られて俳句のとば口に立った若者たちが、自分にしかつくれない一句を目指してどんなふうに俳句の森へと踏み込んでいくのか、祈るような気持ちで読み終えた。
最後に思わず立ち止まってしまった刺激的な作品の中からいくつか挙げておこう。

  不揃ひのビーズを通す星祭 高瀬早紀
  鉛筆を尖らせ夏を描いてみる 品川由衣
  捕虫網木々の匂いに強く触れ 田頭理沙
  生まれれば命名されてサングラス 若藤礼子
  精神の自由メロンの丸くあり   同
  無くし物写真の中に見つけたり 実川栞里
  土産物滝の空気を含ませて 今田京介
  夏蜜柑雨後の明るさもて売らる 山口萌人
  黒板に少し涼しき風が吹く 上垣佳可

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プロフィール

梶葉子

Author:梶葉子
読書のよろこびはなにものにもかえがたいものです。
私を実に実に遠くまで連れ去って
みえない世界を垣間見させ
そこに吹く風や漂う香りを感じさせてくれる
書物に感謝しつつ
ささやかな感想をしたためていきま

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