2017-10

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〈本〉の彼方 10

ソーントン不破直子・著『鎌倉三猫物語』(春風社刊)  
牧野直樹・著『しょんぼり顔のモフモフ猫 ふーちゃんやけども』(左右社刊)
松井道男・著『外ネコ家族にオキテあり』(第三書館刊)
―「図書新聞」掲載

 取り上げる三冊の本の主人公はいずれも猫であるが、著者たちの猫へのアプローチはそれぞれまったく異なる。そしてどのルートを辿っても、読後は猫たちと出会い直したような思いでいっぱいになる。猫と暮らしている人もいない人も、猫がますます好きになる。
 『鎌倉三猫物語』は、鎌倉山に住む学者夫妻(いまは二人とも名誉教授)のもとにやってきた三匹の猫が、『吾輩は猫である』の吾輩のように、自らが語り手となってつづっていく鎌倉山の日々の物語である。
 初代の小町は、お友達の英文学者夫婦のお宅からもらわれてきた由緒正しい真っ白な美猫。自分のことは「わたし」、夫妻のことは「奥様、旦那様」と丁寧きわまりない。
 小町姉ちゃんのあとにやって来たのは、夫妻の長男が教鞭をとる縦国(たてこく)大で拾われたタマ吉、通称タマ。気さくな性格だから、「おいら」と「母ちゃん、父ちゃん」がよく似合う。もう一匹のみなみも縦国大キャンパス出身。構内でひき逃げされ死にかけていたところを縁あって、長男宅のマンション暮らしを経て鎌倉山へ。末っ子の甘えん坊には「あたし」と「お母さん、お父さん」がぴったり。
 小町はすごいハンターだ。大きなコジュケイだって捕まえて、見せにくる。そしてほめてもらったら、嘴を残してあとはすっかり食べてしまう。その一部始終がかなりリアルに描かれているが、たぶん小町本人が自分の口で語るからだろう、猫が生きるってそういうことだよなと自然に腑に落ちてくる。
 みなみは小鳥を生け捕りにすることはできないが、がんばってメジロの死骸をお母さんのもとに咥えてくる。夫妻はみなみのふるまいをいとおしく思ういっぽうで、死骸を見ながら、小鳥もリスやタヌキも、きっと山の中のどこかでひとりで死んでいるんだなと思いをはせる。猫たちとの暮しが自然に生き物の生き死にへと思いを向かわせるのだ。ご近所の犬や猫、小鳥やカラス、ハクビシンやもぐらや蛇……たっぷりの自然に囲まれた鎌倉山の猫たちの暮らしが羨ましくなってしまった。
 英文学者のお母さんが猫たちの行動を見て「リチュアル」と分析するところが面白い。お母さんに言わせれば「人間も動物もリチュアルな動物」なのだそうだ。「リチュアル」は辞書を引くと「儀式」と出て来るが、それは精一杯生きるということなのかもしれないと思った。しんぼうさん(南伸坊)の絵が物語に温かみを添えている。
 『外ネコ家族にオキテあり』は、著者の十一年間にわたる「外ネコ」たちとの交流の記録である。「どんな小さな生き物の歩みでも生命あるものの歩みは地球のかけがえのない歴史である。そうした意味で人間にほとんど関心をもたれない、いやどちらかといえば人間社会からは迷惑がられる場合が多い外ネコ家族の写真付き観察記録は大いに価値があるといえると思う」と著者は記す。室内飼いが一般的となった現在の猫との暮しからはなかなかうかがい知ることのできない、猫たちのサバイバル人生(猫生?)が展開していく。たっぷり収められた子猫たちの写真にも見入ってしまった。めったに家の中に入ってこない外ネコたちの写真の多くは、ガラス越しで切ない。が、そうしか生きられない猫たちである以上、それこそ寝食を投げ打って外ネコたちに寄り添ってきた著者に拍手を送りたい気持ちでいっぱいになった。
 著者はその後仕事の都合で関西に居を移し、いまは週一回は外ネコたちにエサをあげるために東京の家に戻る生活をしている。「これが私の今の人生の大きな任務であり楽しみだからだ」と著者は最後に語っている。外ネコ家族との記録は、そのまま著者の人生の記録にもなっていて、ユニークな著者の生き方の一端にも触れることができる。
 『しょんぼり顔のモフモフ猫ふーちゃんやけども』は、心なごむ写真集だ。ふーちゃんは迷子猫だったらしい。「たまたま出会った僕たち夫婦を頼ってくれた。ふしぎに人懐こい猫。色々あって家族になって、twitterに日々の暮らしぶりを載せていたら、それが写真集になってしまいました」とあるが、しょんぼり顔が何とも言えずチャーミングで、人気者になったのもうなずける。お見送りのビミョーな顔、帰宅したときのうれし顔、なで待ち顔、ジト目……ふーちゃん、愛されているんだねと思わず声をかけたくなった。
 「もうお出かけせえへんやろ? おれとおうちにおるんやな? な?」とか「どこ行ってたんや~! 知らんと寝てもうたやんか~!!」などなど、写真に添えられたキャプションも楽しい。「気が付けばふーちゃんと出会ってもう一年半です。最初はお客さんだったふーちゃんが、今は僕たちの帰りを毎日お出迎えしてくれる、楽しみに待っててくれる大切な家族になりました」とあるが、本当に猫は家族の一員だと思う。
 猫と暮らす一人として、もっとじっくり猫と付き合わないと一日一日がもったいないとつくづく思わせられた三冊だった。
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Author:梶葉子
読書のよろこびはなにものにもかえがたいものです。
私を実に実に遠くまで連れ去って
みえない世界を垣間見させ
そこに吹く風や漂う香りを感じさせてくれる
書物に感謝しつつ
ささやかな感想をしたためていきま

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